理事長所信

2020年度理事長 川田將晴

■はじめに

   本年度、公益社団法人となみ青年会議所は 1970 年の創立から 50 周年を迎えます。これはひとえに、私たちの活動にご理解とご協力をいただいた地域の皆様、そして時代に沿った地域の課題解決に真剣に取り組み、信頼を築き上げた志高き先輩諸兄のご尽力の賜物であります。心より感謝申し上げます。
 上天皇即位に伴い、令和へと改元され、新たな時代が幕を明けました。その中で、私たちが住み暮らすとなみ野はどのように進んでいくのでしょうか。現在、砺波市・南砺市の人口は合わせて約 10 万人ですが、2040年には約 7 万 7 千人にまで減少すると予想されています。人口減少による影響は様々なことが考えられますが、税収減少による行政サービスの低下が招く生活利便性の低下、労働力減少による地域経済の減退、担い手不足による地域活動の衰退など、すべてが住み暮らす私たちの身に降りかかってきます。この事態に適応する取り組みとして、行政による公共施設の再編や空き家利活用の推進、小規模多機能自治制度の導入などがすでに進められています。その中で青年経済人である私たちは何をすべきか。それは「変化を恐れず、挑戦すること」です。様々な価値観・多様性を尊重することが重要となるこれからの時代において「明るく豊かなとなみ野」とは、「誰もが挑戦し続けることができる地域」であると考えます。変化を恐れて行動を起こさなければ、何も前には進まない。挑戦し続けることが周囲を巻き込んでいく運動となるのです。50 周年という大きな節目の年であるからこそ、私たちは恐れることなく挑戦していきます。

半世紀の歩みを糧とし、地域の希望であり続ける決意と実行

  日本における青年会議所運動は、終戦から4 年後の1949年「新しい日本の再建は我々青年の仕事である」という使命感を持った青年達が、東京青年商工会議所(後の東京青年会議所)を設立したことから始まりました。その設立理念は広がりを見せ、日本各地に青年会議所が誕生、1951年には全国的運営の総合調整機関として日本青年会議所が設立されるまでに成長しました。富山県では1952年、市町村単位の設立を原則としていた青年会議所の中で「地域の発展は全県レベルで行うべき」という考えに賛同した青年達により、富山懸青年会議所(後の富山青年会議所)が誕生し、「とやまはひとつ」の理念のもと運動が展開されました。1970年、更に地域に根付いた青年会議所運動を展開すべく、高岡・となみ・新川が拡大分離する運びとなり同年、より新しいとなみの理想像を求め、「明るく豊かなと
 なみの実現」をめざし、青年経済人としての若々しい英知と勇氣と情熱を結集してとなみ青年会議所が創立されました。地域発展のためのまちづくり事業、次代を担う青少年育成事業、地域で活躍できるリーダー育成事業など、その時代ごとに課題を捉え、より良いとなみ野を創り上げるためにご尽力なされた先輩諸兄の活動が、地域からの信頼となり今の私たちの活動の土台となっています。
 人口減少による様々な影響が予想される現在、地域を担っていく人財の不足は大きな課題のひとつです。リーダーとなる人財が居なければ、その地域は活力を失い、衰退の一途を辿ることになります。その中で私たちは「明るく豊かなとなみ野の実現」を目指し、次代の担い手となる人づくりをする青年団体として、これからも地域に必要とされ、希望を与えられる存在であり続けなければなりません。そのためには、活動の中で培ってきた地域との繋がりを糧とし、となみ青年会議所がこの先も必要であると認識していただくことが重要です。これからのとなみ野を創っていく次代の担い手として、私たちとなみ青年会議所が変化を恐れず挑戦し続ける団体であることを、地域に力強く示して参ります。

となみ野の魅力を躍動させる機会の創出

  「となみ野の魅力」と聞いて何を思い浮かべるでしょうか。風景に目を向けると砺波平野に広がる散居村、人々が守り育ててきた里山、春を彩る一面のチューリップ畑、歴史香る古い街並みなど、文化的な側面からは季節を彩る各地域の祭り、世界に誇る五箇山合掌集落、職人が磨き上げてきた伝統工芸品など、産業としては五箇山絹から派生した繊維産業、全国一の野球用木製バット製造、アニメ制作や次世代ロボットの製造など、各地に魅力が溢れ、すべてを数え上げることはできません。となみ野の広域に点在するそれぞれの地域には、固有の歴史と特色ある文化が今でも根付いています。逆に言えば、一つひとつで完結しており、繋がりが薄い現状にあるのではないでしょうか。では、ひとつの地域であるとなみ野として考えたらどうなるのか。各地に散らばる様々な魅力を結集させる、或いは物語としてそれらが繋がったとき、となみ野の魅力が生き生きと躍動することになるはずです。それを考えたとき、すべてに共通するのは「人が創り上げたモノ・コト」であると氣がつきました。つまり、となみ野の魅力とは「人」なのです。
 本年度、公益社団法人日本青年会議所北陸信越地区協議会の最大の発信の場である「地区フォーラム」がとなみ野で開催されます。例年の参加者が千人を超える本大会。先人が創り上げた歴史と文化からなる魅力を堪能していただくことに加え、となみ野の「人」が創り上げる多くの魅力を繋ぎ合わせ、新たな魅力として発信することで、となみ野を訪れる多くの皆様に「また来たい」と思っていただけるよう、その魅力を躍動させていきます。今、となみ野で挑戦している「人」と連携し、変化を恐れず、となみ野の新たな魅力を創り上げ、誰もが挑戦し続けることができる地域の実現に繋げましょう。 

  ■持続可能な地域経済を創る SDGs の推進 
  「SDGs」とは「Sustainable Development Goals」の略称であり、2015 年 9 月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための 2030 アジェンダ」にて記載された2016年から2030年までの国際目標です。持続可能な世界を実現するための 17 のゴール・72のターゲットから構成され、「地球上の誰一人として取り残さない」ことを誓っています。南砺市は 2019 年 7 月、内閣府から「SDGs 未来都市」並びに「自治体 SDGs モデル事業」に選定されました。これを受け同月、となみ青年会議所は、南砺市、一般社団法人リバースプロジェクトと3者による「持続可能な開発目標(SDGs)の推進に関する連携協定」を締結しました。 
  持続可能な世界の実現には、社会、環境、経済がバランス良く機能していることが重要であり、経済を動かす企業活動は、安定した社会と環境の上に成り立ちます。その中で、青年経済人からなる青年会議所に、今求められていることは何か。それは持続可能な地域経済を創る SDGs の推進であると考えます。日本経済に大きな影響力のある経団連は「Society 5.0 for SDGs」の実現を推進しています。 「Society 5.0」は内閣府が定めた、IoT(Internet of Things)、ロボット、人工知能(AI)、ビッグデータ等の新たな技術をあらゆる産業や社会生活に取り入れてイノベーションを創出し、一人ひとりのニーズに合わせる形で社会的課題を解決する新たな社会という定義であり、それを産学官で研究し、SDGsの実現に繋げていくのが「Society 5.0 for SDGs」です。持続可能な世界を創るには、経済を創る企業が率先して SDGs を取り入れる必要があり、私たちの住むとなみ野の企業においても必ず求められるキーワードとなります。
 本年度、持続可能な地域経済を創るためのSDGsを推進していきます。ある新聞社の2019年の調査によると、SDGs の認知度は市民で19%、経営者・管理職で 36%という結果が出ており、まだまだ浸透しているとは言えない現状です。その中でまずは、企業における SDGsの認知度を向上させると共に、なぜ地域経済に SDGs の導入が必要かを認識していただく機会を創出し、選ばれる企業となるための意欲を高めていただきます。SDGs を推進していくこと自体が「変化を恐れず、挑戦すること」であり、「誰もが挑戦し続けることができる地域」を創っていくことに繋がります。この機会を通じ、青年経済人である私たち自身がSDGs の導入を推進していきましょう。 

 ■青年が積極的変化する会員の拡大

 青年会議所の魅力は何かと問われたら、私は「尊敬できる仲間がいること」であると答えます。共に活動する中で、友人でありライバルである存在がいるからこそ切磋琢磨し、向上心を持って活動できる。先輩のリーダーシップに憧れを抱き、同期の活躍に闘争心を掻き立てられ、後輩の行動力の高さに心強さを感じる。そんな仲間が自分を成長させてくれる。すなわちそれが積極的変化であり、青年会議所の大きな魅力なのです。
 となみ青年会議所は「明るく豊かなとなみ野の実現」を目指し、次代の担い手となる人づくりをする青年団体です。そして、JC の使命は「より良い変化をもたらす力を青年に与えるために発展・成長の機会を提供すること」です。青年会議所へ入会することは、青年に積極的変化をもたらし、次代の担い手となる機会を得ることに繋がります。また会員の拡大は、組織を活性化させ、地域を巻き込む運動の推進力を強化させます。だからこそ会員拡大は絶対に必要なのです。
 本年度は、今まで青年会議所が培ってきた拡大手法をブラッシュアップさせ、自ら入会したいと思っていただける、となみ青年会議所独自の拡大手法を確立させ、一人でも多くの人財に入会していただけるよう、挑戦を続けてまいります。

 ■多様性を尊重できる青少年の育成
  「ダイバーシティ」という言葉を数年前からよく耳にするようになりました。直訳すると「多様性」となります。この考え方は1960年代のアメリカで、黒人・女性差別をなくし雇用均等化を図る法律が制定されたことから始まりましたが、現在では社会的少数者に対する雇用や関わり方を指す言葉となっています。しかし社会的少数者という括り自体に私は違和感を覚えます。それは、地球上に生きている一人ひとりが違う人間であり、様々な個性から成り立っているからです。自己の個性を認めることができれば、他者の個性を否定することは無くなるのではないでしょうか。東京都では昨年から、青少年のダイバーシティ意識を育む取り組みがすでに始まっています。次代の担い手となる青少年が、他者の個性を否定せず受け入れることができれば、多様性を尊重する社会の形成に繋がり、誰もが挑戦し続けることができる地域になることが出来るはずです。
 他者の個性を否定せず受け入れるという考え方は、スポーツの世界からも学び取ることができます。スポーツマンシップの定義は様々であり、ルールを厳守することはもちろんですが、相手を尊重することができなければ試合は成立しません。また、試合が終われば相手に敬意を表することが重要です。本年は夏に東京2020オリンピック・パラリンピックが開催されます。近年、青少年期から活躍している日本人スポーツ選手たちが私たちを魅了し続けており、本大会でも大活躍が期待されます。相撲の世界でも同じく、若くして初入幕を果たし関取となった朝乃山関が、昨年の大相撲夏場所において幕内最高優勝を遂げました。富山県出身力士としては103年ぶりであり、富山県民に大きな感動と勇氣を与えてくれました。これはまさに、朝乃山関が挑戦し続けてきたことが実を結んだ結果であります。負けてもあきらめない、挑戦し続けること、そして相手を尊重し敬意を表することの重要性を子供たちに認識していただける機会を創出し、誰もが挑戦し続けることができる地域の形成に繋げていきます。

 ■変化を恐れずに挑戦できる人財の育成

  青年会議所に入会する動機は人それぞれであり、人脈を作りたい、仕事に活かせるスキルを身につけたい、リーダーシップを学びたいなど様々ですが、「地域に貢献できる人財になりたい」という理由で入会する人は多くはないでしょう。しかしながら、青年会議所活動を続けていく中で、活動動機に変化が表れるはずです。地域の課題を抽出し、今この時代に私たちは何をすべきなのかを自分に問い続ける。その中で自分という「個」にあった動機が、相手や地域という「他」に向けた動機になる。入会前と入会後の目的が変化する。これが積極的変化であり、青年会議所の醍醐味であると私は考えます。一人の積極的変化は、集団を変化させ、ひいては地域や国を変化させる。「一」の変化が「千」や「万」になる可能性を秘めています。ですからまずは、あなたから変わりましょう。
 変化することはリスクを伴うかもしれない。既存の概念を変えることは恐いかもしれない。ですが、その一歩を踏み出さなければ、自分の中に積極的変化は起こらないのです。変化を恐れず、まずは何事にも挑戦することが必要なのです。

 ■JCI、日本 JC への参加・協力及び出向者支援

  現在、日本国内に694の青年会議所と約34,500人の会員が存在しています。その総合調整機関として日本青年会議所が存在し、各地青年会議所から集まる出向者で組織されています。そして、各地域に地区協議会、都道府県にブロック協議会がおかれ、運動を展開しています。これらの組織は、694通りの地域環境で育まれた個性の集まりが「明るい豊かな社会の実現」という共通目標のもと、日本を動かさんと運動を展開しています。日本 JC に出向することにより、34,500 りの価値観に触れることができる可能性があり、その場に身をおくことで、新たな刺激を得ることができ、積極的変化をもたらすことに繋がります。私自身も出向を経験する中で、数多くの出会いが自己を成長させてくれました。自分の既成概念にはない発想力と行動力で、地域に積極的変化を起こしてきた仲間が数多く存在することに驚かされました。そして、変化を恐れず挑戦することの重要性を学びました。積極的変化を求め、出向の機会に挑戦する人財を送り出していきます。そして、出向者が活躍できる環境を整えると同時に、出向の魅力を会員で共有し、新たな変化を求める人財を生み出す機会を創出します。となみ青年会議所の目的のひとつに「国際青年会議所の機構を通じて国際理解を深め、世界の繁栄と平和に寄与すること」があります。本年度は JCI 世界会議・横浜大会が開催されます。世界117か国以上が加盟する国際青年会議所の世界大会が日本で開催されることは数年に一度であり、国際理解を深める好機にあります。積極的に参加し、国際青年会議所が挑戦している運動に触れ、となみ野で活用できる可能性を探求します。

 ■むすびに
  国際青年会議所(JCI)は「個人」「地域社会」「ビジネス」「国際性」という4つの機会を JC 運動の活動概念として定義しています。一方で2012年に入会させていただき、青年会議所活動の学びの中で、自分を積極的変化へと導いてくれる 4 つの機会が私の中で生まれてきました。

1. 出会いの機会
 となみ青年会議所の会員、出向先での全国の仲間、JCI 各種事業での世界の仲間、各種事業で関わった市民の皆様など、千人を超える方々とお会いしました。  青年会議所に入会しなければ誰とも出会えていないことでしょう。人に会えば会うほど、自分では考えつかないような発想や価値観に触れることができます。

2.尊敬の機会
 志と行動力でリーダーとしての背中を見せてくれる先輩、切磋琢磨し活動する中で闘争心を掻き立ててくれる同期、自分にはない発想と行動力で突き進む後輩、青年会議所には尊敬できる仲間が数多く存在します。

 3. 感動の機会 
 青年会議所活動を本氣で行っている人たちが事業を終えたとき、成功に導けた嬉し涙、思うようにいかなかった悔し涙、無事に終えることができた安堵の涙を流している姿を間 近で見てきました。そして、自分も JC で何度も涙を流しました。大人が本氣で涙を流すことができる団体であり、涙が自分を成長させてくれました。

 4.言葉の機会 
  数多くの出会いの中で、様々な言葉が私を積極的変化へと奮い立たせてくれました。出会った一人ひとりからいただいた言葉があり、その人の顔を浮かべると同時に言葉が浮かんできます。青年会議所で出会う言葉には、人を積極的変化へと導く力があります。

 「機会は平等 成果は不平等」 

この言葉が私をここまで導いてくれました。
私が青年会議所活動を行ううえで、常に心に留めている言葉です。

入会した瞬間から機会は平等に与えられる。
しかし、それを自己の成長へと繋げられるのは自分次第なのだと。

そう、すべては自分の意識と行動によって変えられるのです。

私たちの積極的変化で、私たちの地域が変わる。
変化を恐れず、未来を創る挑戦者となれ!