2016年度理事長 梅本大輔
はじめに
1949年、戦後間もない混迷の時代において、新日本の再建に向けて結集し、高き志と使命感により青年たちが興した運動は、やがて復興への熱き情熱を持った全国各地の若き同志に次々と伝播し、青年会議所運動は大きな広がりをみせました。この富山においても、1952年に富山懸青年会議所が発足し、日本はもとより富山県の復興と成長に大きく寄与してきたのです。
そして経済的に急速な成長を遂げた1970年、「明るく豊かなとなみの実現をめざし、」となみ青年会議所が創立されました。市民の大多数が更なる経済成長と、物質的豊かさの享受を信じてやまなかったであろう時代に、「となみの伝統ある文化と歴史を尊重しながらも、より新しいとなみの理想像を求め、」青年たちは使命感を持って立ち上がったのです。以来、45年に渡り、志高き先輩諸兄は英知と勇気と情熱をもって、時代に即した運動を展開され多くの功績を残されてきました。
今日、東日本大震災からの復興に向けた政策投資や、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会開催に向けた公共・民間の投資を中心として日本経済は緩やかな回復基調にあります。となみ野においても、北陸新幹線や高速交通網の整備拡充、大型商業施設の進出といった、近隣地域を含めた環境変化により、商業圏や交流人口の大きな転換期を迎えており、地域経済にとっては成長の好機を迎えているように感じます。しかしながら、このような環境の変化が人口減少や少子高齢化、限界集落など、となみ野が抱える諸問題の解決へと即座に繋がるわけではありません。
青年会議所運動を紐解く時、どのような時代背景があろうとも、青年たちは高き理想を掲げ、志を同じくして行動をしてきました。となみ青年会議所においても、「明るい豊かな社会の実現」という理念からぶれることなく運動を発信し展開してきました。大きな転換期を迎えている今こそ、青年会議所の存在意義や存在価値を見つめ直し、となみ野の市民にとって未来を照らす本質的な「明るさ」「豊かさ」を追求し、その実現に向けて確かな歩みを進めるための道を切り拓いていかなければならないのです。
希望溢れるとなみ野の具現
となみ野には、豊かな自然環境と、その恩恵により育まれた歴史や伝統、文化があり、それらに携わる人々が脈々と守り、継承をしてきました。その根底に流れるのは郷土への誇りや愛情であり、それぞれのコミュニティーにおいて結束を固めてきた重要な要素であると同時に、となみ野の未来を描くなかでも郷土への誇りや愛情は欠かせない要素であると考えます。
昨今、政府をはじめとする各種機関の発表する人口の推移予測は、軒並み下降を示しており、となみ野においても更なる少子化の加速、人口の減少が予測されています。それぞれの地域が特徴を活かした自律的で持続的な社会をつくろうと、地方創生が声高に叫ばれる中、コミュニティーが個々に課題解決に取り組むだけでなく、それぞれが特性を活かして輝きながら魅力ある地域として融和する、となみ野の総体的なまちづくりへ向き合うことが必要だと考えます。
過去4年、となみ青年会議所は会員だけでなく市民の皆様にも地域の課題に対する問題意識を共有し、地域の魅力ある資源を再認識いただき、自らがまちづくりへ参画することの重要性を考える機会を、「となみ野フェス」の開催により提供してきました。本年度は過去4回の「となみ野フェス」を総括的に検証することで、地域社会を牽引する団体として課せられた役割を明確化いたします。併せて、転換期を迎えたとなみ野の未来を見据えて、希望溢れる地域社会の実現には何が必要か、どのような意識変革が必要かを突き詰めて議論をし、本質的な「明るさ」「豊かさ」の実現に向けて未来を描くことのできる希望を形あるものとして現すことで、市民の皆様と共に歩むための道を切り拓きます。
未来を追求する青少年の育成
携帯端末の普及などにより、様々な情報を大人の目や道徳心のフィルターを通すことなく得ることができる現代社会において、となみ野の未来を担う子供たちを健全に育成する環境を整えることは、責任世代である我々青年の責務であると考えます。家庭と学校が連携を取り、子供たちを厳しく監視し、悪影響のある情報を規制することは重要だと考えますが、悪い影響を与える情報や事柄から子供たちを隔離するだけでは、健全な心を育むことにならないと考えます。
教育やしつけを通した望ましい育ち方を大人が一方的に子供たちへと押し付けるのではなく、子供が自発的に健全な成長を遂げることが青少年育成の理想ではないかと考えます。理想の実現に向けて必要な最たるものが、大人が地域社会の一員として責任ある行動を見せることであり、仕事や地域行事等、様々な活動にやりがいと責任をもって取り組む姿を見せることが子供たちにとって最高の学びであるのです。人が誰かに必要とされ、頼られることへの喜びは、地域社会における自己の存在意義を確認できる最大の機会であり、その喜びは帰属するコミュニティーへの誇りや愛情、感謝へと昇華されます。子供たちは地域社会で活き活きと活動する大人を見て、そこに憧れと尊敬を抱き理想像を見いだすことでしょう。社会に必要とされることがなぜ喜びに繋がるのか、子供たちが自身の未来を描く際の原点となるような学びの機会を提供いたします。
響き合うネットワークの形成
高い理念を掲げ展開する運動であっても、それが広く市民に伝わることがなければ、事業や活動への理解と協力は得ることができません。SNSをはじめとする多くのコミュニケーションツールが普及したことで、情報発信は容易に行うことができる反面、様々な情報が溢れ返る中、閲覧者の記憶に深く残る情報の提供は非常に難しいと言えます。まずは会員一人ひとりが積極的に、身近なところから事業や活動の情報を提供していくことが必要です。全会員がとなみ青年会議所の広告塔であるという高い意識をもって、運動や事業への深い理解を進めましょう。
その上で、となみ青年会議所の発信する運動や事業が独りよがりなものになることのないよう、参加し協力してくださる皆様がどう感じたか、どう受け取ったのかを収集することが重要です。より多くの検証材料を集めることは、我々が進める運動や事業の修正要素になりえますが、何よりも希望溢れる未来への確かな歩みを進めていることを確認するための前向きな行動なのです。となみ青年会議所と活動を支えてくださる方々とが想いを交換し続けることで、我々の理念と地域の方々の描く未来が共鳴し、響き合い相互に高め合う関係が形成できるでしょう。
妥協なき同志の拡大
近年、全国的に青年会議所の会員は減少の一途を辿っており、となみ青年会議所においても存続の危機といえる状況にあることは紛れもない事実であり、喫緊の課題であります。我々の展開する運動をより広く地域に伝播するためには、理解と協力をしてくださる地域の方々が必要ですが、理解や協力の度合いが深まることが同志として共に活動をしてくれる最大の賛同者を増やすこと、即ち会員拡大へと結びつくのです。
賛同者を増やすには、我々が発信する運動や事業の根底にある理念を理解してもらうと同時に、その運動や事業を通じて地域にどのような効果をもたらすことができるのか、自己がどのように成長する機会となりうるのか等、となみ青年会議所の魅力をも理解してもらう必要があります。40歳までの期間とはいえ、貴重な青年期の限りある時間を割いていただくには、この団体に属することがいかに有意義であるか、今一度会員自らが自身の経験を振り返り再認識をし、他では味わうことのできない青年会議所ならではの魅力を全会員で共有し発信をしなければなりません。
一つの目的に向かって知恵を絞り汗をかき、妥協することなく突き詰めて行動するからこそ築かれる同志との信頼関係があり、自己の限りない成長があり、組織としての進化があるのです。何物にも代え難い経験は会員だけが享受できる財産であり、大きな魅力であると考えます。同志の拡大に向けて全会員が組織の未来を見据え、妥協することなく行動をしていきましょう。
求めれば応える青年会議所の機会
となみ青年会議所の会員である我々は、世界でも有数の青年団体であるJCIの一員であり、日本青年会議所の一員でもあります。昨年度はJCI WORLD CONGRESS金沢大会が開催され、北陸信越地区協議会の地区フォーラムが小矢部の地で開催をされたことで、国際交流の場、地区内同志との交流を深める場に数多くのメンバーが参加しました。本年度も各地で開催される大会や諸会議を、自己の成長や新たなる仲間との出会いの好機と捉えて、積極的に参加していきましょう。青年会議所には求めれば求めた分だけ、自身の学びや成長という結果で応えてくれる大きな可能性があります。広い見識を身に付け、となみ野の未来を描く糧にしてください。
また、本年度も日本JC,北陸信越地区協議会、富山ブロック協議会へ多くのメンバーに出向をしていただきます。出向先で得た学びや経験、気づきというものを、出向者自身の財産にとどめることなく、この組織を更なる進化へと導く可能性を秘めた重要な活性剤と捉えて、全会員で共有していきましょう。
むすびに
となみ青年会議所に入会してから14年目を迎える今、青年経済人として、人として、多くの学びと成長の機会を与えていただけたこと、かけがえのない仲間に出会い、共に研鑽できたこと、事業を通して子供たちの笑顔を数多く見ることができたこと、参加された方々に「ありがとう」の言葉をいただけたこと、全ての事柄にただただ感謝の気持ちでいっぱいです。
私は理事長として、この団体に属する誰もが誇りをもって活動をし、感謝をもって市民に向けた運動を発信する、組織風土を醸成したい。会員同士が互いに磨き合い共に高め合うことができ、発信する運動によって市民意識を変革する可能性を秘めた、青年にとって最高の学び舎であるとなみ青年会議所を、地域にとって本当に必要とされる団体であり続けるよう、次代へと繋げていきたい。積極的変化を追い求めながらも、変わることを目的としないでほしい。誰のために、何のためにという、積極的であると同時に本質的であるための変化を突き詰めていきたい。青年らしく、失敗を恐れず、「明るい豊かな社会の実現」に向けて妥協することなく究めよう!希望溢れる未来への道を・・・